俺の名は<かつぜ>
ラダトームの街の近くの名もない村に住む平民の若者だ。
普段は親と一緒に農業に勤しんでいる。
両親は孤児だった俺を引き取って育ててくれた。
血は繋がっていないが俺にとってこの二人は唯一無二の家族だ。
隣人も村人も ほとんどが温厚な人ばかりで平和な村。
竜王が来てひと吹きすれば消えてしまいそうな村だが、この村はたった一つの俺の故郷だ。
そんな名もないこの村で、毎日農作業をしながら過ごしていたある日、ラダトームの城から1人の兵士がやって来た・・。
兵士の話を聞くとラダトーム城の王・ラルス16世が俺を呼んでいるとの事。
それを聞いて頭が真っ白になった。
城に呼ばれて処刑されるのか!?と一瞬頭をよぎったが そんなはずはない!
悪いことは何一つしていない・・ただの農家の人間だ、それはない。
何のことかわからなかったが兵士に「わかりました・・」と返事をした。
それを聞いた兵士は「明日の日中に城に出向くように」と言い残し去って行った。
父親「王がオマエを呼ぶなんて一体どういう事だ・・?」
母親「罪に問うとか、そういう内容ではなさそうだったわ。明日は遅れないように行きなさい」
まだ気持ちは落ち着かないが明日は王に謁見する日だ、その日は早めに床に就き眠りについた。
そして翌日・・。
まだ正午にならないうちに、少しの荷物を持ち家を出た。
途中で何となく村人の視線を感じる。
昨日 俺の家に兵士が来たことが伝わっているようだ・・。
気にしてても仕方ないのでそのまま歩を進めた。
ラダトームの城は村からさほど遠くない。
行く先々で立っている立札を頼りに一刻ほど進んでいくと、遠くに後ろ向きの城が見えてくるのだ。
だが今まで来たことがあるのはここまで。
生まれてこの方、これ以上城に近づいたことはなかった。
初めての経験に少しワクワク感を覚えながら歩を進めた。
それからさらに一刻ほど進むと城を囲む城壁に辿り着いた。
遠くから見て感じてたより実際は巨大な城で、それを囲む城壁は巨大な石造りでとても堅固なのがわかる。
感心しながら進んで行くと、この城壁が次第に傷だらけになってきた。
そして所々補修した跡があるのが分かった。
補修といっても簡易な応急処置的な状態。
というのも完全に破壊された跡があったり、炎で溶かされた跡があったりで万全な補修が追いつかないというのが見てとれた。
これは恐らく竜王が城を襲った跡・・。
この城壁をぶち破って光の玉を奪い去って行った竜王とは一体・・。
あまりの破壊力に戦慄を覚えながら城壁沿いの道を進んで行くと、いよいよ正門が見えてきた。
正門まで近づくと両脇にラダトーム兵が立っていた。
名前を言って王に呼ばれて来たことを伝えると、中に入れてくれて先導してくれた。
先導している兵士は ずんずん奥まで進んで行く、まるで急いでいるかのように・・。
城内は荘厳な雰囲気で広場には池や噴水があり、周囲には兵士の他に商人や町人もいる。
こんなに大勢がいて賑やかな光景は今まで一度も見たことがなかった。
もっとじっくり眺めていたいところなのだが、先導する兵士が速足なので眺めている暇がない。
兵士の後をついて進んで行くと奥に上に上がる階段が見えてきた、どうやら王の間は上の階にあるらしい。
そして思った通り階段を上がると一本の通路があり、奥の右手に鉄の扉があった。
どうやらここが王の間らしい・・。
扉の前に立つと先導していた兵士が俺にここで待つように指示し、自分はカギを使って扉を開けて中に入って行った・・。
それから間もなくして兵士が戻って来た。
兵士「中に入れ・・王に粗相のないようにな・・」
いよいよ扉をくぐり中に入る・・。
三人の兵士がいて、奥の正面に玉座が横に二つ並んでいる。
右側には誰も座っておらず、左側に王冠を被った威厳のある老人が座っている。
王のラルス16世だ・・。
王の前まで進み、ひざまずいて頭を下げる。
そして緊張しながら王に向かって声を出す。
「村のかつぜでございます、只今参りました・・」
するとラルス16世は、感激で少し震えながら俺に向かって声高らかに言い放つ。
「おお かつぜ! 勇者ロトの血をひく者よ! そなたの来るのを待っておったぞ!!」
かつぜ「えっ!?(ええええぇぇぇぇ!!??)」
続く・・。
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